『沖縄の米軍基地を「本土」で引き取る! 市民からの提案』沖縄の米軍基地を「本土」で引き取る!

『沖縄の米軍基地を「本土」で引き取る! 市民からの提案』沖縄の米軍基地を「本土」で引き取る!

編集委員会編、コモンズ、2019年

書評1:

   全国に広がる米軍基地引き取り運動メンバーが、「なぜ今、基地引き取りか」をつづる。著名人のメッセージ、キーワードの説明、キーブック書評、Q&Aなどからなる。副題の「市民からの提案」とは、米軍基地の「本土」移転先の提案ではなく、基地問題の考え方の転換への提案である。

 各地のメンバーはこの運動をはじめたきっかけとして、差別や植民地主義といったキーワードをあげ、「日本人」が「沖縄」を差別しているから基地が固定化しているのだと気づいた、と言う。なかなか受け入れがたいかもしれないが、彼らが少しずつ理解していった感覚で何度も読んでみて欲しいところ。基地問題というと騒音や犯罪について多く語られがちだが、解決のために本質をみよう、と提案している本なのだ。

 それに気づくきっかけとなった、「基地を持ってかえってほしい、引き取ってほしい」という沖縄からの声。このひとことには覚悟が必要だったはず。非常に切羽詰まった状態。この関係を私たちは、すぐに解消しなければいけない。(久保佳奈恵@福岡)

書評2:

 日本の各地で現在の沖縄の置かれている状況に異論を唱える人たちがいる。もうこれ以上後ろめたい気持ちでは生きられないと。本書は、沖縄の声に応えようという全国の市民と著名人の声である。

 日本が結んだ日米安保条約によって全国の在日米軍基地の7割が沖縄に集中的に偏在するのは、差別の構造である。本書が主張しているのは、その差別を解消するためには、本土への基地移設を行うよう、本土にいる日本人が声を上げるべきだということである。

 日本人のなかには、自分たちは差別などしているつもりは無いし、自分たちが物心ついた時には今のような状況であったという人も多いだろう。とはいえ、本土ではその安保条約を保持しながら、米軍による被害を沖縄に押し付けることで、人権を脅かされる事態も知らず平和に暮らして来たことは事実である。沖縄に対する植民地主義を脱却しない限り、その加害性は拭えない。そもそも米軍基地の問題は沖縄の問題ではなく、日本全体の問題だからである。本書は読者に、本土の日本人は自分たちの加害性を認めてはどうだろう、それが沖縄に向き合い対等となるスタートラインになる、と語りかけている。

 多くの人が本書を読み、米軍基地を本土へ引き取ろうという運動は、安保条約への賛成・反対を超えて、すべての日本人に問いかける運動だということを知ってほしい。(兵藤知子@秋田)