2018.4.20 NHK首都圏ネットワークにて紹介
東京の引き取る会の活動がNHK首都圏ネットワークで紹介されました。
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戦後の日本は、憲法9条に支えられた平和主義の原則のもと、「陸海空軍その他の戦力」を持たないとして、自衛隊を運用してきました。
一方、日米安全保障条約に基づき日本にはアメリカ軍が駐留していますが、アメリカ軍は憲法9条が定める「戦力」にはあたらないとされています。
憲法改正の議論が進む中、平和主義とはどういうことか、アメリカ軍の存在も踏まえながら考え始めた人たちがいます。
ことし2月、東京・新宿で開かれたシンポジウムです。憲法9条で定められた「戦力の不保持」と密接に関わる問題がテーマとなりました。
取り上げられたのは、在日アメリカ軍が憲法9条の「戦力」にあたるかどうかが示された裁判でした。
アメリカ軍の駐留などが争点となった「砂川事件」の裁判で、最高裁は昭和34年、外国の軍隊である在日アメリカ軍は憲法9条の対象にならないという判断を示しました。
シンポジウムではこの裁判に関わった人が、沖縄に目を向ける必要があると訴えました。
「沖縄の人たちに大きな負担を負わせてしまった、という思いが非常に強くあった」と当時の心境を語りました。
なぜ、沖縄なのか。シンポジウムを企画した飯島信さん(69)です。
都内の公立中学校で30年間、社会科の教師を務めた飯島さん。子どもたちに平和を引き継いでいきたいと、平和憲法を守る活動にも取り組んできました。
「これは最初、初めて沖縄に行ったときの・・・」と沖縄訪問時の写真を見せる飯島さん。
しかし11年前、親交を重ねていた沖縄の人からかけられた言葉にショックを受けたといいます。
「本土で憲法9条や護憲の活動をしている人たちに、『沖縄は入っていない』『見えていない』と。その言葉の意味がわかりませんでした。一体これはどういうことなのって」。
本土では昭和40年代以降、基地の整理・縮小が大幅に進んだ一方で、戦後27年間アメリカの統治下にあった沖縄では一向に進まず、基地機能が強化されていきました。
飯島さんが聞かされたのは、憲法で平和主義をうたっても、沖縄に集中するアメリカ軍基地の問題解決にはつながっていないという訴えでした。
この訴えとどう向き合っていくのか。飯島さんは沖縄の基地負担の軽減を考える市民グループを立ち上げました。
会合で飯島さんは「まず、われわれの問題としてこの問題を考えていく、それが出発点」と訴えます。
3月には沖縄を訪れ、アメリカ軍基地を視察。そこで見たのは、中国の海洋進出など日本をとりまく安全保障環境が変化する中で、アメリカ軍の存在感が高まっている現実でした。
参加した人たちからは「実際来てみると、全然違いますね」「9条の維持と平和を、本土の私たちは強調して言っているけど、基地の問題を考えたうえで平和をもう一度、9条も考えなければいけないなと、改めて考えさせられます」といった声が聞かれました。
アメリカ軍という憲法9条の対象にはならない「戦力」と向き合い始めた飯島さんたち。
憲法改正の議論が進む中で、平和主義の意味をより深く考えようとしています。
「まず私たちが取り組むことは現実から出発しなければいけない。憲法9条は平和国家としての理念を言っているわけですから、もう一回、原点に戻って、国民的な議論にしていく」と飯島さんは話しています。
取材にあたった社会部の西牟田慧記者は、次のように話しています。
「今の憲法改正の議論では、9条に自衛隊を明記するかどうかが焦点の1つになっていますが、飯島さんたちは在日アメリカ軍という存在に目を向けて、平和主義とは何か考えていました。
アメリカ軍をめぐっては、東京の横田基地にオスプレイが到着したり、山口県の岩国基地に部隊が移転するなど、本土でも基地の機能に変化が生じています。憲法の平和主義とはどういうことか、私自身も今回の取材で考えさせられましたが、飯島さんが話していた『原点に戻る』という思いは、平和主義の意味や憲法改正の議論を考えていくうえでも大切だと感じました」。
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